TRY

偶然と言えば偶然。
必然といえばまるで運命のようなタイミングでその時は訪れる。

漫画の世界で主人公が自転車を組み立てていた。
それは今回の主人公と同じようなシチュエーションでフレームを手にし、
人からの勧めで自ら自転車を組み立てることになる。

蒔かれた種火は次第にモチベーションとなり、
そして現実のものとなる。

愛車。
1年使い倒してフレームも傷だらけ。

21時を過ぎ、ムーブメントの閉店後、ひっそりと作業を始めた。
今回使用する工具。
わかりやすいよう、必要最低限の工具を揃えた。

細かい部分までオーバーホールする際は更に工具が必要になる。

指導のもと分解はスムーズに完了。
1時間もかからないぐらい。

新しいフレームと古いフレームを並べて記念撮影。

そして組み付けを始める。
まずは芯となるBBの圧入から。

圧入って簡単ね。(BB86)

無事装着。
ゆるすぎても、きつすぎてもよくない。
斜めに圧入されてしまうと回転しなくなってしまう危険性がある。

せっかくのフレーム交換、外したパーツは一度綺麗に。

ブレーキキャリパーの取り付け。


クランクの取り付け。

慣れない手つきだが少しずつ組みつけを進めていく。

指導をしながら、慣れない手つきに冷や冷やしてしまうものだが、
誰でも最初は初心者なのだから仕方ないと肝を冷やす。

小学生が初めて料理を作るときに、
包丁さばきの鮮やかな小学生などいるはずもない。

技術は経験することでしか得る事ができない。


徐々に形になっていく自転車。

ちょっと不親切なフレームの設計に苦戦したり。

チェーンをつなぐことも、簡単そうに見えても実際にやってみると難しい。

ワイヤーを通し、自転車の血管を構築していく。

適正なワイヤーの処理は肝である。
もし脳の血管が詰まったら人は死んでしまうように、
自転車もワイヤーが切れてしまえば制御の利かない暴走マシンに早変わり。

そしてこのワイヤー処理、変速ブレーキ調整が非常に時間がかかる部分。
気づけば3時間以上はワイヤー処理に費やしている。

長さが1cm違うだけで、自転車はとたんに不機嫌な動作を示す。
切断面の処理は見えないけれど、
その見えない場所がどれだけ大切なことか理解できたはず。


ラストスパート。

この時すでにAM5時を過ぎていた。

そして完成。
といっても、まだバーテープも巻き終えてはいないのだが。

それでも、一応乗れる状態には完成することができた。

時間、技術、知識
それらが合わさって初めて自転車が組みあがる。
できればセンスもあるといい。

そして自転車に魂を宿すのは情熱。

気持ちを込めて作られた自転車か、
ただ組まれた自転車は「走り」が大きく変わってくる。

自分で組んだ初めての自転車なら愛着も尚更だろう。

* * *

眠さも吹き飛ぶ早朝の試運転。

組み立てるだけでは自転車の意味はない。
最後の乗車点検は本当に大切。

気持ちよく走れるようになってこそ、自転車の正しい姿だと思う。

あとは残りのバーテープを巻いて完成だ。
最後まで投げずに組み立てた彼。
「おつかれさま」のひとことが心の底からピッタリと合う。

同じくして自分も岐路につき、すぐさま眠りに落ちた。
そして僕は今日も自転車を組み立てる。

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